耐震診断おまかせガイド TOP > コラム:耐震木造建築~古代の知恵~

奈良は斑鳩(いかるが)の地に現存する法隆寺。用明天皇が自らの病の平癒を祈願して建立を開始した寺と仏像を、推古天皇と聖徳太子が引き継ぎ、607年に完成させました。
日本書紀の記録によれば670年に一度全焼していますが、金堂と五重塔は708~714年には再建されていたようです。
この法隆寺の五重塔は、近畿地方に多数存在する三重塔や五重塔の元祖ともいえる存在です。ゆるやかな勾配の屋根は初層(一番下の屋根)、二層、三層…と上がれば上がるほど屋根面積の減少率が大きくなっています。見る者に奇妙な安定を感じさせるこの独特のデザインですが、安定はデザインだけの話ではありません。
日本古来のこれら塔建築のコンセプトを「柳の建築」と呼ぶことがあります。柳の木は大きくしなって揺れることはあっても、決して折れたり倒れたりすることはありません。その柔軟性が持つ安定。「揺れ」は「揺れ」で吸収するという方法を導入しているのが、ご存じ五重塔ほかの塔建築なのです。

具体的には「積み上げ構造」といわれる建築方法が導入されています。五重塔は1つの屋根(1つの階)ごとに軸部や軒が組み上がっています。この1つの屋根(1つの階)のことを「重(え)」と呼びます。それらの「重」の1つひとつを、まるで鉛筆のキャップを重ねるように積み上げているのです。
ポイントは1つひとつの「重」は特殊な切り組み工法により繋げられているだけで、決して“堅固に結合しているわけではない”ということです。
この構造をコンクリート造りの一体化した「剛構造」に対し、「柔構造」と呼びます。地震が起こった場合、五重塔は各重が個別に震動し、互いの震動を打ち消して揺れを吸収するのです。この構造により塔構造の建築物は、まず地震で倒壊することはありません。実際に1995年の阪神淡路大震災でも、兵庫県内の塔は1つも倒壊しませんでした。個人の住宅にこの構造を利用するわけにはいきませんが、これら建物の揺れ自体を利用し、地震の震動を吸収させる「柔構造」は、日本はもちろん世界の超高層建築に採用されています。
法隆寺の五重塔は世界最古の建築物としてユネスコに認定されています。